テクノロジーというと人間の営みが生み出したものであり、そうであるが故に人間の手でコントロールでき、人間の思いに沿って進展していくものという意識をわれわれは持ちがちである。しかし、この本では、テクノロジーの進化を生命の進化になぞらえ、またテクノロジーの全体的な在り様を生態系に模して語っている。
そのことによって、テクノロジーの進化の方向性に一定の法則があること、新しいテクノロジーがどのように受容され、また絶滅していくのかといったことが分かりやすく解き明かされている。
テクノロジーが生命と同じような性格をもっているという観点が特に有益なのは、我々が新しいテクノロジーとどのように向き合えばよいのかということを考えるときであろう。
生命の進化が逆方向に戻っていくことがないように、テクノロジーの進化も逆走をすることはなく、また新しいテクノロジーは必ずしも我々の社会にうまく適応できるとも限らない。
そうであれば、新しいテクノロジーを拒否したり完全にコントロールしようとしたり、古いテクノロジーをすぐに捨て去ったりするような極端な方法に出るのではなく、しばらくの間そのテクノロジーと大なり小なり共存しながら、適応の道を探っていくということが大切である。
そのことを、自身の若いころの体験やアーミッシュの人々の考えなどを例に挙げながら説明してくれている。
新しい観点をもつことで、これまで対処することが難しかった問題に向き合う道筋が見えてくるという、非常によい例を見せてくれたような本だと思う。
- 感想投稿日 : 2015年9月27日
- 読了日 : 2015年8月30日
- 本棚登録日 : 2015年8月23日
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