米軍と農民――沖縄県伊江島 (岩波新書)

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  • 岩波書店 (1973年8月20日発売)
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沖縄本島から北西に約9kmに位置する伊江島も、沖縄戦の際には
激しい戦場となった。GIたちから愛されたアメリカの従軍記者
アーニー・パイルが日本軍の銃弾に倒れたのも、この島だった。

戦後、アメリカの占領下ではあったが、島の人々は土地を耕し、
作物を植え、やっと平和な日々が訪れたかに思えた。

しかし、平穏な生活はアメリカ軍の一方的な通告によって壊される。
飛行場と演習場を作るので立ち退け。苦労して開墾した土地を取り
上げる替わりに、石だらけの荒れ地をあげよう。

地代もススメの涙、無惨に荒らされた作物の補償はないに等しい。
そんな条件など飲めるはずもなく、島の人たちは武力と政治力を
誇示するアメリカに立ち向かった。

その中心となったのが本書の著者であり、後に「沖縄のガンジー」と
称されることとなる阿波根氏だ。

アメリカ軍と沖縄政府に何度も陳情に出向き、沖縄本島で伊江島の
窮状を訴える為に「乞食行進」を行う。

アメリカ軍が勝手に杭を打って「米人以外、立ち入り禁止」の看板を
掲げれば、それを取り外す。替わりに地主たちの主張を書いた看板
を掲げ直す。

土地の強制接収に反対の声を上げる人々に対し、アメリカ軍が時に暴力
に訴え、難癖をつけて裁判所に引き渡したりもするが、住民側は徹底し
て非暴力で対する。

短気を起こすな、相手を敬え。著者たちの反対運動の根底にあるものだ。
それだからこそ、運動は長く継続することが可能だったのかもしれない。

なんの咎もないのに殴られたり蹴られたり、不当逮捕が繰り返されたり
したら「力には力で」となりそうなものなのだが、著者たちの運動の
過程で発せられた言葉の数々はとても深く、考えさせられる。

沖縄のガンジーこと阿波根昌鴻池氏。基地反対運動から、戦争の愚かさ
と平和の尊さを訴え続け、2002年に肺炎の為に亡くなった。彼の最初の
闘いが詳細に綴られた作品だった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2018年6月5日
読了日 : 2018年6月5日
本棚登録日 : 2018年6月5日

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