純白のドレスに身を包んだ彼女が、白いマイクをステージにそっと
置いた時に彼女は「伝説」となった。
「わたしのわがままを許してくれてありがとう。幸せになります」
人気アイドルのまま引退したのは山口百恵。映画やテレビ・ドラマ、
CMで共演した俳優・三浦友和の妻になる為に。
彼女が芸能界で活躍したのは僅かに7年半。素人スカウト番組
「スター誕生」への出場から引退までを、年ごとに追ったのが
本書である。
引退前に出版されてベスト・セラーになった本人の筆になる『蒼い
時』や雑誌のインタビュー、伴侶となった三浦友和の著書は勿論、
関係者の発言を、既刊の書籍や雑誌から拾い集めて山口百恵像を
浮き彫りにしている。
頭脳警察などを聴いていた背伸びした子供だった私は、ピンクレディ
やキャンディーズの歌は歌えないし、振付も出来なかった。しかし、
山口百恵と沢田研二は別格だ。このふたりの歌なら、結構歌える。
映画も、ドラマも「百恵ちゃんが出ているから」との理由で見ていた。
不幸な役柄が多かった。白血病になったり、産まれたばかりの頃に
取り違えられていたり、短距離走のトップ・ランナーだったのに
走れなくなったり、身分違いの恋を反対されたり。
映画「絶唱」を観て、死して花嫁になれた小雪が可哀想でボロボロ
泣いたのを思い出す。
歌手として、女優として。ふたつの面の百恵像を描きながら、その
時代の芸能界の動きも記されている。
存命している関係者もまだまだいるのだが、直接の取材を一切せずに
書くという実験的評伝の手法も面白い。
コアな百恵ファンには物足りないかもしれないが、私のようなミーハー
なファンだった人間にはいい資料だ。
本書を読んで改めて気付いた。百恵ちゃんは引退した時、21歳だった
のだよね。その歳にしてあの存在感。こんなアイドル、もう出て来ない
だろうなぁ。「百恵伝説」は「百恵神話」になりそうだ。
- 感想投稿日 : 2013年2月1日
- 読了日 : 2013年2月1日
- 本棚登録日 : 2013年2月1日
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