バカヤロー経済学 (晋遊舎新書 5)

著者 :
  • 晋遊舎 (2009年5月12日発売)
3.66
  • (19)
  • (53)
  • (42)
  • (6)
  • (2)
本棚登録 : 307
感想 : 54
3

経済の発展の側面は、技術の進歩が原動力なのではなく、食料生産の飛躍的増大による農業に占める人口割合の減少が最大で根本的なベースである。飢餓の喫緊の不安から解放された市民が次に「期待」の生産を目指したのが資本主義社会である。故に経済の問題とはすべて「期待」と「予測」の齟齬から生じる。
 市民は常に「新しい効用」を求め、それに応えるものが「近代産業」になる。現代の資本主義社会における市民は自らをも含む「創造的な効用」を欲することにおいて、その生存が担保されるという仕組みになる。
 しかし「効用」は衣食住のような人間の必然以外のものは予測することが難しく、そもそもものが溢れた現代社会では発生しづらい。ゆえにどんな統治者も経済運営を確実に上向きにすることは不可能であり、それは偶発的事象として成功する。社会の最大関心事であり最も影響力が大きいのは経済発展であるが、それは太陽の黒点活動を管理することが不可能なのと同じくらいに政治家には原理的に不可能である。せいぜいできるのは、経済活動を不当に制限して、新たな効用の創出を邪魔しないことくらいしか無い。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 社会
感想投稿日 : 2012年4月29日
読了日 : -
本棚登録日 : 2012年4月29日

みんなの感想をみる

ツイートする