関東軍を含む政府側の政策立案・実行過程を主に分析した政策史。終章の冒頭にある、戦後の農林省幹部官僚の発言。戦争でムチャクチャになったので失敗と言えば失敗だが、当時は(農村では人が過剰で)食えなかったのだからいいことだったし、今でもそう思っている、との内容だ。自分が同じ立場だったら同様に思ってしまいそうでドキリとした。
百万戸計画以降に国策として本格化すると、国内官庁は省益や影響力拡大のため積極関与していく。軍事的要請があった関東軍と、農村の過剰人口問題があった日本国内の事情が噛み合っていた。ただし一旦動き始めると、開拓民送出ノルマや農民以外への対象者の拡大、関東軍側が必ずしも望まない「質の悪い移民」と、この政策自体が目的化していく。
著者も終章で書いているが、本書を読んでいて、政策が実施されてから客観的な政策評価が行われた形跡が見当たらない。なるほど、移民国策基本要綱(最終的に満洲開拓政策基本要綱として結実)の策定過程で、関東軍が関係者を集めて懇談会を実施。その中で問題点の指摘や異論も出てはいた。しかし採り上げられることはなかった。政策が肥大化すると誰も止められなくなった、と著者は総括する。戦争の泥沼化についてよく聞く指摘だが、この政策でもやはりそうだった。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
日本
- 感想投稿日 : 2020年1月5日
- 読了日 : 2020年1月5日
- 本棚登録日 : 2020年1月5日
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