論文集なので割と読みやすかった。東條英機は「独裁者」とは言えず、細かな秀才型・実務型官僚、という漠然とした知識はあったが改めて確認できた。今の日本の各界指導者でもどれだけの人間が戦略ヴィジョンを持っているかというと疑問だが、戦時の戦争指導者としては戦略ヴィジョンの欠如は「重大な欠陥」と著者は述べている。
辻政信については、彼が追求した「積極果敢」「必勝の信念」といった理念は日本陸軍自体の理念でもあり、それ故に異能ではあったが決して異質ではなかったと指摘している。著者は別の本で、インパール作戦での牟田口廉也にも類似の評価をしている。となると、彼らの指導が生んだ犠牲の責任は組織全体の責任でもあるということになるだろう。
また、諸悪の根源のように見られがちな統帥権の独立が、元々明治期には軍人の政治化防止のための制度だったと指摘している。明治期にはそれでも政治と軍の指導者の情勢認識や出自が似通っていたので柔軟な対応が可能だったが、政党勢力の伸長に対する軍の警戒や軍人の専門職化により軍が自らの勢力拡大のために統帥権独立を使うようになったという。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
日本
- 感想投稿日 : 2018年10月21日
- 読了日 : 2018年10月21日
- 本棚登録日 : 2018年10月21日
みんなの感想をみる