タイトルの文字を見て思わず「誤植?」と思ってしまいます「ハワイイ?」。
しかし、表紙の日本語タイトルの下、「ハワイイ紀行」の英訳タイトル「Cruising Around Hawaii」そう、「ii」iの文字が重なっています。そもそも本来、英語の単語にこのような綴りはありません。現地の元々の発音に沿ってのスペルHawaii(ハワイイ)なのです。詳しくは本書中の著者の説明を読んでいただくとして、このこと一つとっても想像できるように、この本は「ハワイ」と聞いて一般の人が普通に思い浮かべる、芸能人やお金持ちのリゾート地、ホノルルやワイキキビーチ、キラウェア火山観光といったところ、太平洋の楽園「常夏の島・ハワイ」の旅行ガイドではありません。
今年の夏8月、テレビや新聞等で報道されたマウイ島での火災、壊滅的な被害を受け、多くの犠牲者が出て、今も復興がなかなか進んでいない、かって、王国の首都が置かれていたラハイナの中心市街地の著述にしても、王国の実態、外界との接触、交流、それらのアメリカの統治になる前の歴史を具体的な記述で描いていきます。
著者の池澤夏樹は、ギリシアや沖縄にも住み、観光地のオフシーズンのありようについてもエッセイ等で描き、語っているように、観光地としてのハワイイでない部分、サーフィンやフラも光が当たっているところだけでなく、もっと根源的なところについても迫っています。また、観光ではなく、現地の、生活者としての島民の暮らしについても自身の取材、文献探索、読み込みにより、丹念に描き、トータルなハワイイを把握しようとしています。中身は深いですが文章は平易です。
観光地としてのハワイだけでない、ハワイイを知りたい人、また、ハワイに限らず、それぞれの地域で暮らすということ、人間の営みの根源について考えてみたい人、ぜひ手に取って読んでみて下さい。
へろへろ隊員 井上
- 感想投稿日 : 2023年11月28日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2023年11月28日
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