西洋哲学史: 古代から中世へ (岩波新書 新赤版 1007)

著者 :
  • 岩波書店 (2006年4月20日発売)
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本棚登録 : 934
感想 : 51
4

     -2007.03.12

良書である。著者独特の語り口がいい。
-やわらかな叙述のなかに哲学者たちの魅力的な原テクストを多数散りばめつつ、「思考する」ことそのものへと読者を誘う新鮮な哲学史入門-と、扉にうたわれるように、採り上げられた先哲者たちの思考を、著者一流の受容を通して、静謐な佇まいながらしっかりと伝わってくる。
岩波新書の上下巻、「古代から中世へ」、「近代から現代へ」とそれぞれ副題された哲学史は、著者自らがいうように「確実に哲学そのもの」となりえていると思われる。折にふれ再読を誘われる書。その章立ての構成を記しておこう。

「古代から中世へ」
1-哲学の資源へ
「いっさいのものは神々に充ちている」-タレス、アナクシマンドロス、アナクシメネス
2-ハルモニアへ
「世界には音階があり、対立するものの調和が支配している」-ピタゴラスとその学派、ヘラクレイトス、クセノファネス
3-存在の思考へ
「あるならば、生まれず、滅びない」-パルメニデス、エレアのゼノン、メリッソス
4-四大と原子論
「世界は愛憎に満ち、無は有におとらず存在する」-エンペドクレス、アナクサゴラス、デモクリトス
5-知者と愛知者
「私がしたがうのは神に対してであって、諸君にではない」-ソフィストたち、ソクラテス、ディオゲネス
6-イデアと世界
「かれらはさまざまなものの影だけを真の存在とみとめている」-プラトン
7-自然のロゴス
「すべての人間は、生まれつき知ることを欲する」-アリストテレス
8-生と死の技法
「今日のこの日が、あたかも最期の日であるかのように」-ストア派の哲学者群像
9-古代の懐疑論
「懐疑主義とは、現象と思考を対置する能力である」-メガラ派、アカデメイア派、ピュロン主義
10-一者の思考へ
「一を分有するものはすべて一であるとともに、一ではない」-フィロン、プロティノス、プロクロス
11-神という真理
「きみ自身のうちに帰れ、真理は人間の内部に宿る」-アウグスティヌス
12-一、善、永遠
「存在することと存在するものとはことなる」-ボエティウス
13-神性への道程
「神はその卓越性のゆえに、いみじくも無と呼ばれる」-偽ディオニソス、エリウゲナ、アンセルムス
14-哲学と神学と
「神が存在することは、五つの道によって証明される」-トマス.アクィナス
15-神の絶対性へ
「存在は神にも、一義的に語られ、神にはすべてが現前する」-スコトゥス、オッカム、デカルト

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 評論-1/哲学.思想系
感想投稿日 : 2022年10月16日
読了日 : 2010年10月19日
本棚登録日 : 2010年10月15日

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