フィロソフィア・ヤポニカ (講談社学術文庫)

著者 :
  • 講談社 (2011年10月13日発売)
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<微分的人間>-とは?   -2012.04.26記

パスカルは、
未熟な人間だけが旅を好むのであって、
成熟した人間は、部屋の中にじっとしていて、
そこに無上の幸福を感じることができるのだと考えていたから、めったに旅をしなかった。
微分は曲線上の接線の方向と大きさを切り出してくる。
しかしそれは運動の根源ないし予料をしめすものではあっても、
まだ空間の中に実現される運動や移動そのものではない。
部屋の中でじっとしていることの好きな成熟した人間は、
この微分の状態を、無上の幸福感を持って生きることができるのだ。
それはこの微分には欠如というものがなく、方向と大きさを持った力がすきまなく充満して、
自分に欠けたものを自分の外に追い求めようという欲望さえ、少しも湧いてこないからなのだ。
このような微分的人間のことを、パスカルは神を知る人々と呼んだ。
パスカルにとって、神は微分に宿りたまうものであったのだ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 評論-1/哲学.思想系
感想投稿日 : 2022年10月23日
読了日 : -
本棚登録日 : 2012年2月16日

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