共依存 苦しいけれど、離れられない (朝日文庫)

著者 :
  • 朝日新聞出版 (2012年5月8日発売)
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感想 : 19
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信田さよ子先生の本は2冊目のレビューです。

「アダルトチルドレン」「共依存」という言葉が人口に膾炙していく中で、この言葉を世に広めた一人である先生自身が、臨床事例やメディア批評を通じて自己批判的に「共依存」について問い直すという内容になっております。

私自身は共依存の問題を「家族」の問題、つまり親子関係、夫婦関係、きょうだいの関係といった人間関係の問題としてばかり考えてきたふしがありました。ただ、それだけでなく「ジェンダー」の問題、つまり男女の性別役割分業の問題、結婚制度の問題、性別にかかわる社会的立場のズレもまた共依存の問題を乗り越えがたくしていることを改めてこの本で考えさせられました。例えば、「妻は旦那をケアして当たり前」という価値観、アルコール依存症の夫をケアする妻に対するまなざしとアルコール依存症を持つ妻をケアする夫に対するまなざしの違い等。

それにしても、共依存の恐ろしさはやはり世話をすることが「権力」であったり「暴力」であったりに変質してしまうことですね。「あの人が困っているから助ける」というところから「強い自分が弱いあの人を世話して〈あげる〉」という支配にだんだん変わっていくことですね。

力をもたない側がケアさせられることを強制と感じないほどに馴致され、拒否したいと感じる自分がまちがっているとまでケアの正当性が内面化されたとき、時としてケアはひとを殺すこともある。(p.85)

ここの恐ろしさを噛みしめるとき、「共依存は依存ではなく支配なのだ」(p.184)というこの本の結論がよく理解できるようになると思います。
だからこそ、「支配から脱するために、支配しない・されない地平を希求するために」(p.185)共依存という言葉を手掛かりに、家族のあり方、男女のあり方について問い直していきたいと思います。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 学術書
感想投稿日 : 2016年7月11日
読了日 : 2016年7月11日
本棚登録日 : 2016年7月11日

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