記憶の果て (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社 (2001年8月10日発売)
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本棚登録 : 290
感想 : 33
4

お気に入りの作者の一人でもある浦賀和宏。
「彼女は存在しない」、「こわれもの」と読んできて、今回、デビュー作となる本書を図書館で借りて来て読了。これが、19歳の時のデビュー作っていうんだから驚く。19歳でこんな内容の本を書けるの!?まさに驚きの一冊だった。10代でデビューする作家も多いし、過去にいろいろ読んだけど、10代のデビュー作でここまで驚かされたのは、羽田圭介の「黒冷水」以来じゃないか・・・?

で、本書の内容なんだが・・・。
一言では言えない。ミステリーでもあるし、SFでもあるし、青春小説の匂いもするし・・・。これらの要素がかなり高い次元で文章になってる。主人公の心の描写も丁寧に描かれている。この主人公の性格は好き嫌いの分かれるところかもしれないが、自分は好きだなぁ。こういう青春時代真っただ中の心情・・・。脇を固める二人の友達、これがまた、憎らしいほどよく描けてる。このあたり、青春小説の匂いがする由縁だと思う。

主人公と他の人物との会話で、けっこう科学や哲学的な内容が含まれているんだが、この辺りはクドイ気がした。ただでさえ長い小説なのに、薀蓄が長々と続くとダレてくるし・・・。しかし、この内容を19歳で書いてるって言うのはスゴイと思う。今なら、もっとスマートに書けるんじゃないだろうか?

父親の自殺に始まる物語で、いろいろな謎が提示されるんだけど、最後まで読んでも、全ての謎が解明されるわけじゃない。それでも妙に満足感を与える作品だった。
普通、最後まで読んで、あっちこっちに謎が残ったままだと嫌悪感しか残らないし、続編なんて読む気も起きないけど、この作品は違う。シリーズになってるようなので、シリーズ2作目「時の鳥篭」を読んでみたいと思う。

☆4個

「BOOK」データベース~

親父が死んだ。自殺だった。俺は安藤直樹。親父が残したパソコンのなかにいるのは裕子。いや違う、あれは単なるプログラムにすぎない。でもプログラムに意識が宿ったのならば…。いったい彼女は何者なんだ!徹底した方法意識に貫かれたテクストが読者を挑発する、第五回メフィスト賞に輝くデビュー作。

うん、挑発されました!
前にも書いたけど、この作者、もっと売れても良いと思うんだけどなぁ・・・。
アホみたいに作品を量産してる某人気小説家の最近の作品より、格段に面白いと思うけどな!

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 国内推理
感想投稿日 : 2016年5月14日
読了日 : 2016年5月13日
本棚登録日 : 2015年8月16日

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