うしろめたさの人類学

著者 :
  • ミシマ社 (2017年9月16日発売)
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本棚登録 : 2021
感想 : 140
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途上国、新興国を訪れた時に
きれいだ汚いだとか、便利だ不便だとか、以外の
もやもやとした感情を持ち帰ったことがある人のために
「あのときのもやもや」を解説してくれる一冊。

12歳。家族と一緒に行ったフィリピン。
街を歩いていたら、路上で生活する同じくらいの歳の女の子が、私に「money, money」と言ってきた。
おなじくらいの歳、おなじ女の子。その子と私。
これってなんなんだろう。

18歳。初めて自分で飛行機のチケットを買って訪れたインド。
日本の小学生が集めてくれた鉛筆の寄付を、コルカタ郊外の農村の小学校で配った。
鉛筆を渡した時、喜んでくれると思ったら、目の前の子はぽかーんとした表情。
急に外国人が現れて、鉛筆を渡してきた。
「自分は持っていない側の人間で、この外国人は持っている側の人間なのかな」
そう思わせてしまっただろうか。
これってなんなんだろう。

21歳。知り合いの紹介で行き着いた、カンボジアの水上村。
そこで暮らす人々は経済的には貧しいけれど、一緒に過ごすととても幸せそうで。
なんだ。お金って関係ないのかな。
外の人間が良かれと思って何かを与えることは、彼らの今ある幸せを壊してしまうのかな。
しかし帰国2週間後。その村に住む14歳の女の子が、生活に困窮して自殺をしたと聞いた。
これってなんなんだろう。

エチオピアでの実体験から社会を読み解く作者の言葉に
自分の実体験、「あのときのもやもや」が思い出された。
丁寧に解説をしてもらえたことで、「あぁそういうことだったのか」とやっと自分の気持ちが理解できて、漠然とした罪悪感から救ってくれた1冊。

感染症の影響で、社会のあり方が見直されている今だからこそ学ぶことがある1冊でもあると思います。
出会えて良かったです。本当にありがとうございます。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2020年4月26日
読了日 : 2020年4月26日
本棚登録日 : 2020年4月26日

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