最も印象に残ったのは、「処刑」である。
罪を犯し、処刑用の星に飛ばされた男は、生活に必要不可欠な水をもたらし、またいつ爆発するか分からない「玉」を持ち、星を巡る旅に出る。死の恐怖と戦いながら玉のボタンを押すが、ある瞬間から、ボタンを押すことに躊躇がなくなる。そのときの男の気づきが、この短編の本質である気がした。
死は、日常にありながら非日常のように扱われ、人は死について考えず、また考えようとしない。しかしながら、死の可能性は生きる私たちの周囲に無数に存在し、今生きる私たちはその死へ繋がるルートを幸運にも逃れてきたに過ぎない。そして、この先も、死の可能性は私たちにつきまとい続ける。
これは、死の恐怖と戦いながらボタンを押す男と、何ら変わらないのかもしれない。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
小説
- 感想投稿日 : 2023年10月24日
- 読了日 : 2023年4月13日
- 本棚登録日 : 2023年4月13日
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