しゃべれどもしゃべれども

著者 :
  • 新潮社 (1997年8月1日発売)
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感想 : 91
5

これからどう進むべきか。

26歳の落語家・二ツ目の“三つ葉“こと外山達也は、先が見えない毎日を悶々と過ごす。

同じだ。定年後、どうするんだ、オレは・・・。

でも、根本的に違う。

“三つ葉“のように古典を追求する落語家は、江戸や明治に生まれた笑いを、身一つで今の人たちに伝えなければならない。

それがどんなにむずかしいことか、僕自身を振り返ればすぐに分かる。

物心ついてから、ほんの5年前まで落語で笑ったことはなかったではないか。

落語を最初から好きな人もいるが、若い頃は、その楽しさが分からなかった人も多いのではないか。

“三つ葉“の前にどういうわけか、うまく「話す」ことができない人たちが、集まってきた。

従弟の良、小学5年の村林、黒猫を連想させる女性・十河、元プロ野球選手の湯河原。

まったく仲が良くならない4人は落語を教わるため、“三つ葉“の家に不定期に集まるようになる。

こんな集まり、早く終わってしまえばいい・・・と思っていた“三つ葉“は、

いつのまにか、悩みを抱えた彼らに憎まれ口を叩くようになっていた。

なんとかしてやりたいと、勝手に身体が動くようになっていたのだ・・・。

小説全体が人情話のようだった。

読んでいる場面場面で、作品と自分との距離感が少しずつ変わっていく気がした。

マネでもなんでもいい。

本気で惚れたもの、“小三文師匠“、『茶の湯』に突き進めば、光は射してくると感じた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2022年11月11日
読了日 : 2022年11月11日
本棚登録日 : 2022年11月11日

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