星新一〈下〉―一〇〇一話をつくった人 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (477ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101482262

作品紹介・あらすじ

「セキストラ」でのデビュー後、ドライでウィットに富んだショートショートは多くの読者を獲得する。膨れ上がる人気の一方で、新しすぎる個性は文壇との間に確執を生んでいた。そして前人未到の作品数を生み出す中、星新一自身にも、マンネリ化への恐怖が襲いかかることに。本人と親交のあった関係者134人への取材と、膨大な遺品からたどる、明かされることのなかった小説家の生涯。

感想・レビュー・書評

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  • 読み応えのある評伝だった。
    作家の、孤独でかなしい面が浮き彫りになっており、複雑な気持ちにはなる。だが、それを聞いて得心がいった、というようなところがある。手放しに幸せではないかもしれない。数奇と言って良い人生かもしれない。作品が残り続けてほしい、と願うのは、作家の業だが、星新一の場合、その願いは叶っていると言って良い。同時代に評価されずにひっそり世を去る作家は多い。星新一は同時代に評価されなかったわけではないが、あまりに特異な作家であったために、正当な評価を得ていたとは言い難いかもしれない。この評伝を含め、後世の再評価が待たれる作家なのかもしれない。

  • 仕事にも、富にも、名声にも、友人にも恵まれ、家族にも囲まれ、それでもなお、寂しい、誰にも理解されないって、人間の業の深さよ。

  • 何か切なく感じました。

  • 星新一先生は、魂削って作品を作り上げてたのですね。
    この本に関連する作家さんの作品も読んでみたくなりました。
    ここまで調べ尽くして整理して、纏め、本にするのは とんでもなく大変な作業だったと思います。
    最相 葉月先生、すごいです。

  • 力作。
    タモリさんとのエピソードがいい。

  • 初めて星新一を読んだ時、ずっと前に亡くなられた方ということを知らないで「こんなに新しいことを書く人がいるんだ」と思った。それはこれだけの努力のたまものだったんだなあ。間口が広くて世代問わずに楽しめるのは良いことだと思う。

  • 「作家星新一の出来るまで」という前半部は
    父星一が単体で非常に興味深い人物であることもあって
    星新一の評伝どうこうより
    星製薬にまつわる記録物語として面白い
    後半「SF作家星新一を通してみるその作品」
    とでもいうべき内容は
    評伝として作者の背景に強く力が入っているだけに
    クラーク・アシモフ・ハインラインに対する
    星新一・小松左京・筒井康隆というあたりの
    「時代」に対するSF評論
    (以前に感想書いた福島正実『未踏の時代』と重なるところ大)
    であって
    評伝評論事跡と作者の思いが
    入り混じったものになってしまっているが
    しかし多くの遺品資料から広く研究され書かれていて
    また関係者の証言資料としても
    作家星新一に対する決定版評論とまではいえないまでも
    優れて書かれるべきだった作品として
    高く評価されるものだと思う
    単に感想としては
    評伝部分については
    「家で家族に仕事の愚痴をこぼす父親などいない」と書く
    星新一とその父親はいわゆる常識的でなく面白いし
    評論としては
    ショートショートという作品形式のその量ではなく
    数の多さが
    星新一作品の評価を難しくしているのはまったく同感であり
    けれど生前没後関係なく
    「正しい評価」がなされたかどうかというのは
    作者が言うように
    評価されたがっていない作者がいるはずがなく
    星新一が言ったように
    売れたがっていない作者がいるはずがなく
    けれど死後もいつまでも読み継がれるかどうかと
    「正しい評価」はまた別物であろうと
    とりあえず江坂遊作品を買ってみた

  • 『未踏の時代』を読みSF黎明期に興味を持ち、こちらも購入。

  • ノンフィクション

  •  下巻はSFの旗手としての星新一から、ショートショートの名手星新一となり、やがてショートショートを1001作品書くという呪縛にとりつかれたある一人の男性の姿が現れてくる。

     読んでみて、私が産まれた頃にはもうSFは普通に娯楽の一環としてアリだったのだが、SFが市民権を得るまでにはここまでの苦労があったのかと驚いた。
     推理小説、かつては探偵小説と呼ばれたジャンルもSFより前にその課程を経ている。

     SFの旗手としてもてはやされ、ショートショートと言えば星新一と言われ、子供から大人まで誰にでも読まれる作家となる。場の中心におり、いつも面白いことを言う。けれども彼の心は誰にも開かれておらず、そして表向きの顔を辞めることは出来ない。
     同時代に生きていた手塚治虫が一生マンガの第一線に立とうとしたように、星新一は普遍的に楽しまれるショートショートの名手であろうとした。

     1アイディアで長編が書けるようなネタをショートショートとして出し続けてきた作家というのは、ものすごい。なんだかこう魂を削って、命を削っているような気がする。
     すごかった。

     けれども、私が今後星新一のショートショートを読むときに、こんなことは関係なく作品を楽しむような気がする。それはそれですごい。

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著者プロフィール

1963年、東京生まれの神戸育ち。関西学院大学法学部卒業。科学技術と人間の関係性、スポーツ、精神医療、信仰などをテーマに執筆活動を展開。著書に『絶対音感』(小学館ノンフィクション大賞)、『星新一 一〇〇一話をつくった人』(大佛次郎賞、講談社ノンフィクション賞ほか)、『青いバラ』『セラピスト』『れるられる』『ナグネ 中国朝鮮族の友と日本』『証し 日本のキリスト者』『中井久夫 人と仕事』ほか、エッセイ集に『なんといふ空』『最相葉月のさいとび』『最相葉月 仕事の手帳』など多数。ミシマ社では『辛口サイショーの人生案内』『辛口サイショーの人生案内DX』『未来への周遊券』(瀬名秀明との共著)『胎児のはなし』(増﨑英明との共著)を刊行。

「2024年 『母の最終講義』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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