浮雲 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (1951年12月18日発売)
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本棚登録 : 829
感想 : 81
5

情景、人物の姿、そして何よりも心理の描写が精緻で引き込まれる。何度か使われているリズム感のある叙述は軽妙。序盤は恋に落ちた主人公の心理や言動に共感でき、読みながらにやついてしまうほど。しかし、そこから徐々に主な登場人物たちの心は壊れ、言動も常軌を逸していく。状況は緊張感を増しながらエスカレートしてゆく。何の変哲も無い設定なのに、描写の力で最後まで引っ張りきられてしまった。この作品は日本文学史上の最初の言文一致の小説で無かったとしても、傑作であると思う。今まで、読んでいなかった自分を愚かだとさえ思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2023年1月12日
読了日 : 2023年1月12日
本棚登録日 : 2023年1月12日

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