悪女について (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (1983年3月29日発売)
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感想 : 306
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美貌の若き実業家、富小路公子が急死した。
彼女に関わった27人へのインタビューが公子の人生を暴き出す。

昔最初だけ読んで途中で断念した記憶が。
かつてはフィクションと割り切れたけれど、自分の嘘に酔えて、人を自分の都合で振り回せる、そんな人を身近で見ていた経験があると、改めて読み始めたものの、時々彼女と被って、読み進めるのがつらくなる。
けど、絶妙なタイミングで、公子を崇めるような人が登場する。それで、ふっと気持ちが楽になってついつい読んでしまった。
夜学で簿記一級を取るような努力に、人を動かす行動力。凛として素敵な女性である一面と、人を欺いて笑顔でごっそりと奪っていく強欲さに冷淡さ。
公子は鏡のよう。
彼女を見下したり不遜な態度を見せた人間と、彼女に誠実に対応した人々で、悪女にも女神にもなる。
彼女なりの正義なのかもしれない。
烏丸さまの利用の仕方、テレビの愛犬対談のエピソードは痛快だし、銀座のマダムの宝石にはニヤリとした。
これだけ壮絶な生き方をした彼女は幸せだったのか。富と名声は得たけども。それも謎のまま。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2022年3月1日
読了日 : 2022年3月1日
本棚登録日 : 2022年3月1日

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