時間を往来する話はいくらでもある。この話もその一つだ。ただ、こういう話の多くは過去もしくは未来の世界に積極的に関わって様々な問題を起こすか、もしくはそれをどのように精算していくかの話になるものだ。この小説ではあえて様々な条件を設定することで、タイムトラベラーの持つ矛盾点を解決してしまおうとする。
過去に戻れるが現在は変えられない。戻っても座席から立ち上がることはできず、積極的に関わることができないというのである。これは言ってみればアルバムをみるのと同じであり、二度と取り返すことができない過去を痛感することである。その後悔と焦燥と後味の悪さと、そして感動と、そういったものを詰め込んだ作品になっている。
発想は面白く、読んでいて惹きつけられるストーリーである。欲を言えばタイムトラベルの様々な制約を小出しに出して行ったほうが良かったのではないか。最初の方でこの小説のルールはこうだとあるのは理解はし易いが、話の面白みは半減するような気がした。そんなことを言う私にこのような作品を書く才はないが。
姉妹作もあるらしくいずれは読んでみたいと思っている。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
電子書籍
- 感想投稿日 : 2019年6月5日
- 読了日 : 2019年6月5日
- 本棚登録日 : 2019年6月5日
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