1ミリの後悔もない、はずがない

著者 :
  • 新潮社 (2018年1月31日発売)
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中学生のときに大切だった片思い。当時付き合い始めた二人も、いまは違う相手と結婚している。
当時告白できなかった人もいる。人気者だった先輩は十五年以上経って、もっさりしたおじさんになっていた。
貧乏だった学生時代を乗り越えた現在、立派な父親になった人がいる。
人気者だった先輩は落ちぶれたように見えてもやはり魅力たっぷりのイケメンで、人妻を虜にしている。
夜逃げをするほど金銭的に困っていた少女も、いまは中学生の娘を育てる母親になっている。娘が中学でいじめられ始めたことから、親子で電車の旅に出た。そこで再会したのは苦しいとき助けてくれた友人、そしてあの頃の恋人からの手紙。

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中学や高校のころの人間関係は、ほとんど学校や家の周りの人たちがすべてだった。そこでの関係がうまくいかなくなってしまえば地獄の底みたいな毎日を送ることになる。ナイスな恋人やイケてる友人に囲まれていればハッピーな青春を過ごせる。
でも、状況は変わる。地獄だろうが天国だろうがいずれ終わりがくる。

進学や就職、色んな人と出会って、多くの人と会わなくなる。学生の時に人気者だった人が大人になったら落ちぶれたり、真面目だった人がイメージそのままで堅実な家庭を築いたりする。

「それが人生の面白さなんですよ」と悟ったようなことは言えないけど、「いまダメダメな状況にいたとしても、その状況が一生続くわけではない」とは言える。
つまりは諸行無常なのだ。

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由井さんの結婚相手、雄一さんがとてもいい人だった。
娘が学校でいじめられてることを聞き、「転校してもいい」「仕事を変えて引っ越してもいい」とすぐに言えるナイスな父親っぷり。家の外でつらいことがあっても、それを家に持ち込まないよう、気持ちを切り替えてから玄関のドアを開ける心構え。不安になるくらいに素晴らしい人だ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 一木けい
感想投稿日 : 2020年6月28日
読了日 : 2020年6月27日
本棚登録日 : 2020年6月28日

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