死の壁 (新潮新書)

著者 :
  • 新潮社 (2004年4月16日発売)
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それ以前から考えることは多かったけど、死について本腰を入れて考え始めたのは2017年2月8日以降だったと思う。
死ぬとはどういうことなのか、そもそも生きている状態とはどういう定義なのか。医学系の本や宗教、スピリチュアル系の本など色んな文献を斜め読みした結果、何がなんだか全くわからなくなってしまった経験がある。

2020年、新型コロナウイルスによる訃報や、テレビで活躍する役者さんやミュージシャンの自殺報道が相次ぐなかで、ネット記事に引用されている養老さんの文章を見かけた。

”死は不幸だけれども、その死を不幸にしないことが大事なのです。「死んだら仕方がない」というふうに考えるのは大切なことなのです。”(P182より引用)

これは、と思って引用元の『死の壁』を読むことにした。
正直に言うと、養老さんの言葉に納得できる箇所と、それはあまりにも極端な考え方じゃないですか養老さん、と感じる部分が混在していた。自分には受け入れにくい部分も、そういう考え方もあるのか、という具合に思えた。読んでみてよかった。色んなひとがいて、色んな考え方がある。

なぜ人を殺してはいけないかというと、元に戻せない、取り返しがつかないことだから、ということらしい。
そして、自殺していけない理由は、取り返しがつかないことと、周囲に大きな影響を与えてしまうからだという。

うーん。一応納得はできるけど、もっと違う別の何かがあるような気もする。

人生のなかで他者の死は経験せざるをえないことで、死は様々な後遺症(影響)を残すが、それを良し悪しと捉えるのではなく、それを含んでいるのが人生で別の道はない、と言い切る養老さん。

自分はそんなふうに達観できないなあ。
色んなひとの死を経験し続けて、悲しい想いをし続けることが人生ならば、自分の意志で消え去りたいような気持にさえなってくる。さよならだけが人生なのか。銀河鉄道999みたいに機械の身体を手に入れて、不老不死になれば、他者の死も自分の死も無くなるのかな。
結局わからないまま、人生は続く。そしていつか死ぬ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 養老孟司
感想投稿日 : 2020年11月15日
読了日 : 2020年11月15日
本棚登録日 : 2020年11月15日

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