”これを書いた人間は少し頭がおかしいのではないかと思った”と、あとがきに吉村さんは書いている。
自分も読みながら同じことを思った。これは頭がどうかしているな、と。
たとえば、臭いがきついとわかっているものをわざわざ嗅いでしまうような感覚。絶対に不快になると知っているのにグロ画像を見てしまう気持ち。
吉村さんの作品にはそういう種類の吸引力がある。
人間が理性で隠している邪な感情や身体の恥部を、これでもかといわんばかりにネガティブな方向に炸裂させてくれる。その光景はもはや地獄であり、夢も希望もあるわけない世界なんだけれど目が離せない。
今回の短編集で一番読むのがきつかった、『家族ゼリー』について。
家の外で他人のフリをして性行為を楽しむ兄と弟。そしてその父親。母親だって負けていない。挙句の果てに家族四人で交わる地獄絵図。気持ち悪くてどうしようもない。ただただ汚い。
連続する不快感をどこか心地よく味わっている自分に驚く。ランナーズハイみたいなものだろうか。
読んでいる人間も少し頭がおかしいのだろうか。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
吉村萬壱
- 感想投稿日 : 2020年4月26日
- 読了日 : 2020年4月21日
- 本棚登録日 : 2020年4月21日
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