祐介・字慰 (文春文庫 お 76-1)

著者 :
  • 文藝春秋 (2019年5月9日発売)
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その男には金がない。家賃もまともに支払えない。スーパーでバイトをしているが態度は悪い。
男はバンドのギターボーカル。ライブをやってもぜんぜん客は入らない。ベースとドラムの二人から見放される。人望もない。

男はひとりで出演できるイベントに誘われて京都まで行き、嫌な思いをさせられた。挙句の果てに打ち上げで出会った女と寝たら、ボコボコされて裸のまま外に放り出される。

女子小学生から体操服を奪い、それを着てみたが、彼は明らかに変態。その体操服を買い取ろうとする男子小学生も現れた。
彼らが間違っているのか。世界が間違っているのか。それは誰にもわからない。

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世界を憎んでいるような、舐め腐った態度の男が、世界から愛されるわけがない。誰からも認めてもらえない苛立ちを日常にぶつけている。
けれども、まだ、どこかに自分を評価してくれる人がいるのでは、と男は期待している。惨めで、浅はかで、とても人間臭かった。

破滅的に生きるバンドマンと、なかなかの変態っぷりを見せつける小学五年生が出会うラストは異様だけど、そこだけが真実であるようにすら見えた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 尾崎世界観
感想投稿日 : 2022年3月14日
読了日 : 2022年3月10日
本棚登録日 : 2022年3月10日

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