責任を無化してくれる企業、CF。
そこで働く人たちはかつて何らかの罪を犯し、CFに無化してもらった末にCFの三十八階で物質化した責任を撹拌する作業にあたっている。
池袋の暴走事故を思わせる自動車事故が起きるが、事故を起こした老人の責任は無化される。
CFに関わる人たちが描かれていくなかで、CFのやっていることはおかしいと言ってテロを企てる男が現れる。思惑とは違うかたちで爆弾テロは実行され、死者がでる。
そもそもCFとは空っぽの穴のようなものであり、詐欺だ。ひとりで蒸発していく責任を、CFの仕事に見せかけているだけ。
テロリストの男もCF側の人間で、空っぽのCFに何かあるように見せかけるために爆発させたりしているだけ。
責任は勝手にトリノ、ゾ・カレていく。
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責任を無化できる社会になったら犯罪行為は増えていくのだろうか。そもそも責任とは一体何なのか。
わからないことはとても多く、CFのビルのように巨大にそびえ立つ。
疑って見てみれば、その巨大なビルもその責任も内側は空っぽなのかもしれないな。
CFの周りで暮らす人たちの人間模様。さまざまな思考が面白かった。自分の責任も無化して取り除いてほしい。たとえそれが詐欺でも、当事者が納得していれば別にいいでしょ。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
吉村萬壱
- 感想投稿日 : 2022年12月19日
- 読了日 : 2022年12月16日
- 本棚登録日 : 2022年12月16日
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