“国際社会の流れは、協調と融和に向かっている。世紀初頭に中東で巻き起こった、アメリカとイスラム諸国の戦争も、時の合衆国大統領が世論に押されて無様な退陣劇を演じたことで、沈静化した。以来、むやみと軍事力を行使する国は、世界中から白い目で見られるようになった。いかに南沙の原油がほしいといっても、そのために戦争を起こすのは割に合わない。
これまでの遺恨はそれぞれ我慢して、なんとか平和協力の道を探ろうという合意がなされた。五ヵ国合弁の南沙開発公社が発足し、暗中模索の末に考え出されたのが、まず資源利用とは関係のない施設を南沙に建設し、戦争を抑止するシンボルにしようという案だった。”(p.26-27)
冒頭で説明されるこの世界の超近未来が、現実と余りにかけ離れていて悲しくなった。2003年の時点では、こういう夢を描くことがまだ可能だったのに、世界は真逆の方向に進んでいる。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
日本小説(娯楽)
- 感想投稿日 : 2013年7月16日
- 読了日 : 2013年5月25日
- 本棚登録日 : 2013年7月16日
みんなの感想をみる