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1984年から約4年間に語られたものから採録された講演録であり、図式的であることも手伝って、著者の思索やその対象への入門者にも分かりやすい編集となっている。
目次からも明らかであるように、バフチン、ウィトゲンシュタイン、漱石、ドフトエフスキー、仁斎、三島、丸山、フロイト、スピノザ、マルクス、デカルト、ハイデガー、キルケゴール、ニーチェ、安吾といった近代の哲学、文学についての言及が主となっており、宗教や広告を主題とした章もある。
現在では意外とも言えないのかもしれないが、江戸注釈学あたりで、朱子学を再評価し、仁斎、徂徠、宣長の系列を近代的な文脈に説き起こしているくだりは秀逸である。
スピノザは当時としても再興されていたのかもしれないが、デカルトについての評価も、講演から30年を経過しようとする現在でも新しさを感じる。
標題には、悲劇とあるが、同名の章は一章をなしており、ギリシア悲劇からシェイクスピアまでを視野にしているが、全体では悲劇は主要な演題ではない。言葉と悲劇という標題にとらわれることなく、広いテーマを分かりやすく読むことができる。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2016年2月20日
- 読了日 : 2016年1月16日
- 本棚登録日 : 2015年8月16日
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corpusさんのコメント
2023/05/29