哲学と宗教全史

著者 :
  • ダイヤモンド社 (2019年8月8日発売)
4.19
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本棚登録 : 4409
感想 : 208
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友人のオススメにて読み始めたのですが、実は正直、心の中で「え、コレをオススメ!?」と思ってました(笑
本著の威圧的な見た目wと、著者の過去の著作を読んだ際には特別面白かったという印象は無かったので。。
『グローバル時代の必須教養 「都市」の世界史』
https://booklog.jp/users/skylark0311/archives/1/4569835627#comment

読んでみて、良い意味で裏切られました。
本著のテーマ自体は手垢がつきまくったモノで、単に事実を羅列した要約だったりすると途中で寝ちゃう訳ですが、そうならなかったということ。元々1万冊超を読んで来られた著者が、大学の学長や講義でのアウトプットを経て、伝える力を更に磨きあげられたのか。(・・・なんて上から目線っぽく言えた立場では私は全くないのですが)
特に感じたのは、①パッケージングの工夫、②著者ならではの目線 の2点です。

まず①、本著は分厚い割に意外とスイスイ読め、文章の読みやすさもあるんですが、1項目が非常に短く切られていて、章立ても12章+子章的に分かれてるトコがあるので実質18章。読んでて達成感があるのは上手い作りだなと感じました。
それぞれの哲学者の主張の骨子を、その時代背景を踏まえて説明し、同時代の学者たちを横並びに比較し、というのは親切かつグローバル・ヒストリー的な工夫です。今のインドで牛が聖獣となった所以なんかも纏まっているのは非常にキャッチーでした。

続いて②、本著は各哲学や宗教の紹介でありつつ、著者の考察…と言うか、「コイツら(宗教家や哲学者たち)は、当時の時代背景(気候なり、国際関係なり、好み(?)なり)の影響を多大に受けていたはずで、それはこうだ」というのを大胆に打ち出している、というのが凄い。
これはつまり、宗教家や哲学者は普遍的に無謬な存在ではなく、その時代のその環境を必死に生きてきた一人の人間だと相対化する試みのようにも思え、これは本著の最後に取り上げられたレヴィ=ストロースの思想そのものなのでは?とも。

ちなみに、本著を読んで脇道で感じたコトは下記2点。
アリストテレスの言う「中庸」って、鬼が家に侵入してきた時、素手で殴りかかるのは蛮勇、怖がって隠れるのは臆病、んで中庸は「武器を持って知恵を絞って戦う」ということで・・・なんか思ってた中庸と違うと言うか、話し合って解決くらいのヤツが来ると思ってたんですが、元祖がこう仰るのであれば、中庸の捉え方をあらためるべきなのかもしれません。
あと、人間の幸福を求めたはずの哲学者たちが、あんまり幸せそうな生涯を送ってないコトも、ちょっと気になりました。不遇のまま独身で過ごしたショーペンハウアー、発狂したニーチェ、婚約破棄して42歳で亡くなったキルケゴール…。

一連の450ページ余りを読み進めながら、著者が文中にサラッと「驚くほど優れた思想はなかなか登場してこない。人間はさほど賢くはないのです。」と述べたのは、なかなか沁みる言葉です。
薦めてくれた友人にも感謝!良著でした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: なんとなく興味ある圏
感想投稿日 : 2022年8月7日
読了日 : 2022年8月7日
本棚登録日 : 2022年7月30日

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