小説の神様 あなたを読む物語(下) (講談社タイガ)

著者 :
  • 講談社 (2018年9月20日発売)
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本棚登録 : 611
感想 : 50

ようやく下巻を読めた。
書き手と、読み手と、それぞれが出す答えが気になっていたんだけど
確かに受け取ることができた。

自由になるお金は増えたけど
一冊の本にかける時間は減ってしまい
読み終わった本を何度も読み返すことはもうなくなってしまったから
その一度の読書でしっかり物語を噛み締めたくて
どうしても遅読になってしまう。
そうして読み終わった本でさえ、次々と捲っていく違う物語に押されて
すぐ、詳細の説明ができないほどになってしまう。

それでも、何かの拍子に再び触れれば
その時の読書体験も、印象に残った内容も蘇ってきて
ああ、ちゃんと染み込んでいたんだな、と安心する。
いつまでも覚えていられる人を羨ましく思ったり
きっかけがなければ忘れたままの自分を薄情に思ったり
でも別にそんなこと気にしなくてもいいんだな
自分を形造る深い海の底に沈んで養分になってるんだから、きっと。

若気の至りで乱暴な感想を書き落としたこともあった。
昨今のSNSを通じて、声が思いもよらずダイレクトに届くことを知ってしまってからは
その声が作者や他の読者を傷つけて、もしかしたら続刊の可能性を摘んだ一因になったかも知れないと恐怖し
同じく一向に続きが出ない作品を待つ資格が自分にはないだろうと思えた。
このブクログで、自分が昔付けた辛口の感想にイイネが押されて
たどってみたらその人は「クソ本」という棚にその本を入れていて
そんな想いで書いたわけじゃなかったと、吐き気がするのを感じた。でも強弱あれど同じことだ。
発した言葉には責任があった。受け取り手にとってはクソさを擁護する文だった。ただそれだけだ。

合わない作品だって確かにあるけれど
どんな作品からも、何かを読み解ける人間でありたい。きっとどの作品だって、鼻ほじりながら片手間で書かれたりなんかしてないだろう。
振り絞るように綴られたんだろう。
その行ないに報いる言葉が、辛辣である必要は全くないと思う。

どうせ吐くなら作者に負けじとめいいっぱい美しい言葉を。
それが、物語への恩返しだなと思った。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ライトノベル(日常・恋愛)
感想投稿日 : 2022年5月30日
読了日 : 2022年5月30日
本棚登録日 : 2020年10月14日

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