災厄の町 (ハヤカワ・ミステリ文庫 2-12)

  • 早川書房 (1977年1月30日発売)
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本棚登録 : 179
感想 : 24
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クイーンもの。ライツヴィルに小説を書くために訪れたエラリー。土地の創始者一家の家に住まうことになるが、突如結婚をしたノーラ・ライトとジム・ハイトはライト家の外れの家に住むことになるが、ハロウィンのある日ノーラは本からこぼれ落ちた手紙をみて失神してしまう。エラリーとノーラの妹パットは、ジムが妻殺しを計画していると読み取れる手紙だったことに気づく……。
 面白かった。中期以降のクイーンの舞台となるライツヴィルシリーズの原点ということで、どういう町なんだろうと思いながら読んでいたので、ライツヴィルの雰囲気とかを読み取れるように読んだというのもあるし、謎部分の興味をひかれたのもあり、本作品の要素を楽しむことができた気がします。
 もっともライツヴィルは、よくある田舎町という印象でクイーンがこの町を好きになった理由はいまいちわからなかったんですが……。この事件のさなかのあの大混乱があった町が好きというのが不思議です。あの大混乱があった町ではなく穏やか町が好きではあるんでしょうが。
 よくよく考えると、クイーンはニューヨークだったり、ハリウッドだったり、喧騒の町を住んできたからライツヴィルのような、話のネタは人々の噂のような田舎町が好きになったんでしょうか。
 クイーン作品としてはこれまで初だと思うのですが、中盤以降は法廷が舞台となります。そのため、主な要素はジム・ハイトは殺人を犯したのか、それとも犯さなかったのか、犯さなかったのならそれを証明する手立ては? 真犯人は? というのが主題でした。
 そのため、これまでのクイーン作品の最初から最後まで謎に満ち溢れた人物たちが登場したりする作品ではなく、クイーンの作風がこれまでとだいぶ違いましたね。なので、これまでのクイーンの作品として読んでしまうと物足りなさがある気がします。
 とはいえ、そこはクイーンで謎を提示し興味をひきつけますし、犯人として指摘するための工程は驚きました。エラリーが知ることのなかった一つの事実から、エラリーは事件の全貌をすべて見抜くシーンは、さすがエラリーだなと。このような事件にエラリーが苦戦するのは珍しいなあ、とか思ったのですが、材料不足だったからなんですねえ。
 犯人は……さてどうでしょうね。
 ライツヴィルシリーズ第一作。クイーンの転機の作品でもあるので、新しいクイーンを発見できた面白い作品でした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 推理小説(海外)
感想投稿日 : 2012年10月26日
読了日 : 2012年10月26日
本棚登録日 : 2012年10月26日

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