自分が自分であること――すなわちポール・オースターがポール・オースターであること――をめぐる精神史。
これまでの作品(特に「ニューヨーク三部作」などの初期作品)においては、ポール・オースターという名前や存在を装置として活用することで新たな文学を切り拓いてきたオースター。その作者が人生の老いという冬の時代にさしかかった現在、こらまでの精神の変遷を赤裸々に語っています。たとえば、インタビューなどではこれまであまり詳しく語ってこなかったみずからのユダヤ性なども語られています。
とはいっても、単なる回顧録などではなく、みずからを「君」(you)と呼んで語りかけることで生じる自己と自己自身との距離が生み出す緊張感も伝わってきます。そして、その緊張感も含めて見事に日本語へと変換している名訳もうれしいです。
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- 感想投稿日 : 2022年10月29日
- 読了日 : 2022年10月27日
- 本棚登録日 : 2022年10月27日
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