主人公は刑事である婚約者と東京オリンピック後に式を挙げる予定だったが、オリンピック直前に電話で自分のことは忘れるよう言われ姿をくらましてしまう。混乱する主人公に彼が殺人事件の容疑者であるということも知らされる。しかも被害者は婚約者とコンビを組んでいた老刑事の娘だった。
主人公は婚約者の潔白を信じながら、彼を自力で探し出すことを決意。細い糸をたどりながら川崎、熱海、焼津、筑豊と彼を追うがすんでのところで会えず仕舞いでいた。
一方、その後の捜査で彼は嵌められただけということがわかる。しかし黒幕を裁くためには何としても彼の証言が必要。そのことを知った主人公はさらに彼の足取りを辿るが、ある偶然から彼の居場所をつかむ。向かったのはアメリカ占領下の宮古島。そこで彼と再会し事の真相を知るのだが、それはあまりにも理不尽で耐えがたいものだった。
追っては逃げられ追っては逃げられの追走劇。向かったあちこちで親切な人に出会ったり、たまたま情報を持っている人に出会ったりなど、人探しするのにこんなに簡単にいくかなとは思うものの、婚約者を追う執念は漂ってくる。
主人公もそうだが、娘を殺された老刑事側から事件に迫っていくのだが、娘の知らなかった一面を目の当たりにした親の心情や情けなさなど風采の上がらない刑事であるが故に迫るものがある。
そして今までの全ては最後の章に向けての助走のような感じで、それが最後の章に活きてくる。
この作家さんは痛みや悲しみ、背負ったものによる苦悩を描くのがうまい。
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- 感想投稿日 : 2020年3月4日
- 読了日 : 2020年3月4日
- 本棚登録日 : 2020年3月4日
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