「毒親」の正体 ――精神科医の診察室から ((新潮新書))

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  • 新潮社 (2018年3月15日発売)
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読了:2018/9/12

虐待親から逃げて、戸籍も抜けた。住所も辿られないように行政に訴えて住民票その他をロックした。感情の安定したパートナーを得て自分の家族も持った。あの頃をいちいち思い出しては泣かないようになった。いつもふとした時に頭に入り込んで来ていた、心臓に包丁を突き立てて赤々と血を流してこの世から消える自分の映像も見なくなった。手首の傷も言われなければ見えなくなった。身体というハリボテの中に常時抱えていた「消えたい」という思いはいつのまにか薄らいでいた。

でも。
そこから先に進まない。虚無感が心のどこかにある。

毒親に対する新たな視点を提供しているというこの本ならばここから先に進むための抜け口を教えてくれるのではないか、そう思って読み始めたのだが。

しょっぱな、
「子の成長を妨げた上に何とか大人になって自立した子に金を無心する親」
「性的虐待をした親」
は交流を絶っても仕方がない真性の毒親である、本書では対象外、と述べられてて拍子抜けした。
うちはどちらもコンプリートである。

それでも一応読んでみた内容としては、毒親はASD、ADHDを持っているために心の中の「注意の部屋」が目の前の一つのことでいっぱいになり子に注意を払わなかったり、「心の理論」がないために「これを言ったら相手(子)はどう思うか」が分からないのでひどく傷つけることを平然と言ったり、かつ衝動性があるために自分の言ったことや自分のした約束をすぐに忘れたり、「横のつながり」がないために「こういうことはやめてほしい」と頼んでも、具体的に何が「こういうこと」に該当するか分からないので、子への境界侵害行為を繰り返す、という。

あとは愛着スタイルの問題。これはよく毒親本やアダチル本に出てくる不安型と回避型の話。
さらにうつ病、DV被害、経済的困窮も要因になることがある。そりゃそうだろうねぇ、という感想。

説明が「心の理論がない」「衝動的」「『注意の部屋』に一つしか入らない」など、抽象的にしか書いていないので、具体例がほしかったなぁ。ASDやADHDが、本のカバー袖に書いてあるような「ちょっとしたことで体を引きずり回す」ほどの爆発的行為に至る過程がよく分からなかった。

後半の「親が毒親になった理由を知ったのち、ここからどう乗り越えていくか」については、参考になるようなならないような…「ゆるす(手放す)」ってこれまでにもずっと言われてることじゃないかね?

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 心_一般
感想投稿日 : 2018年9月13日
読了日 : 2018年9月13日
本棚登録日 : 2018年9月13日

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