【理想とは異なる人生だったとしても】
史上稀にみる哲人皇帝だったとされる、ローマのマルクス・アウレーリウスが、自身の生き方に関する思いを、ひとり内省しながら書き留めた手記。
巻末に収録された訳者の神谷美恵子さんの解説が素晴らしくて、そこにマルクスは平和を好んだにもかかわらず、生涯の多くの時間を戦場で過ごさざるを得なかったこと、そのことに傷つきながらも哲学に救いをもとめて前進する生き生きとした姿が本書の魅力になっていることが書かれていて、はっとさせられました。
最近、人生でいうと立派な”半ば”に差しかかって、ちっとも若いころに思い描いたように人生が進んでいないことを、どう受け止めたものか……と悶々とする時間が増えつつあります。
理想とする人生を歩んで、そのような自分に満ち足りて過ごすことができれば、それは確かに幸せなことだけれど。
でも、そうじゃない人生だったとしても、それを懸命に生きる人は限りなく美しい……はず。
ていうか、そうでなきゃ、やだ!
個人的に特に好きだったのは、制約を受ける人生を炎に例えた次の一節。
「小さな灯りならば、これに消されてしまうであろうが、炎々と燃える火は、持ち込まれたものをたちまち自分のものに同化して焼きつくし、投げ入れられたものによって一層高く躍りあがる」
赤々と燃える炎のかけらを、自分のうちにも宿らせてもらった気持ちで読み終えた一冊でした。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2022年3月1日
- 読了日 : 2022年2月27日
- 本棚登録日 : 2022年2月27日
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