不倫がばれて仕事をクビになり、鬱状態となった25歳のエミリが都会から逃げ、頼った相手は母方の祖父だった。
15年ぶりに会う祖父と、海の見える家で暮らした2ヶ月間の出来事。
エアコンもテレビも無い。21時には就寝して5時には起床し、浜辺から神社まで愛犬のコロの散歩。
畑では野菜を、港では魚を貰い二人で朝食の準備をする。
祖父の作ってくれる料理の美味しさと優しさ、都会とは違う非日常感の中で、エミリは癒され自分を見つめ直しはじめる。
そんな時に、元の同僚の沙耶がエミリを訪ねてやってくる。心配するふりをしながら、居酒屋でエミリの不倫をばらすフレネミーぶり。
閉鎖的な田舎であっという間に広がった噂に、再度傷つき心が折れそうになるエミリ。
そんな時も祖父の料理はやっぱり、美味しい。港で魚をくれる心平や、直人や京香も、変わらずエミリに接してくれた。
世界は変えられなくても、気分は変えられる。
祖父に教わりながら、沢山の料理を覚えて行くエミリ。祖父からもらった包丁を手に新生活の為に、海辺の街を出ていく。
胃袋をつかまれるとはよく言ったものだ。
祖父の作る料理達が、私の目の前のテーブルに並べられて大葉の香りや、味噌汁の湯気まで感じられるような気持ちになる。
終始食べてみたい、これをつまみにキンキンに冷えたビールを飲みたい!!と何度想像したことか。
海辺の漁師町も私の地元によく似ている。
新鮮な魚を貰ったり、釣りをしたり蟹をとったり。
両親が他界してからは帰ることもないので、懐かしくなった。
エミリは小さくなった包丁を手に、いつか誰かの胃袋をつかんで幸せになって欲しい。
- 感想投稿日 : 2021年7月1日
- 読了日 : 2021年7月1日
- 本棚登録日 : 2021年7月1日
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