宇宙のランデヴー 4上 (ハヤカワ文庫 SF ク 1-27)

  • 早川書房 (1997年3月1日発売)
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本棚登録 : 88
感想 : 7
3

 終わった。ようやく読み終えたという感じ。全部のシリーズを一気に読んだが、長かったという気はしない。冗長な感じを持つかなと思ったがそうでもなく楽しめた。

 最後まで通してみると、やはり「1」は独立した作品だ。「2」以降は別物。要約すると、「1」は Sf で、「2」~「4」は sF。同じSFでも少しばかり趣が異なるってこと。「4」ではその色が顕著。「2」は主人公に読者が感情移入するためのプロローグ。それは、しり切れとんぼの結末で加速され、「3」へ進むと主人公は読者の一部になる。ここを乗り切れなかったら、たぶんその人は「3」や「4」に進まないだろうと思う(そしてその人は多い、と私は思う)。

 「3」では、主人公とそれをとりまく人を含む環境が盛りだくさん登場する。どうやって結末に持っていくんだと思うほど登場する。クラーク作品には珍しい登場人物の多さと言っても良い。この辺の雰囲気は、同じ「アーサー」・ヘイリーの小説と似ている。将棋のように、十分な兵力がたまったら一気にそれらの兵力を使い捨てながら王を追いつめていく感じに似ている。このときの兵力、つまり将棋の駒が登場人物であり、王が主題であるわけだ。

 この「4」になると、前半(つまり上巻)ではその登場「人物」は、加速度的に増える。多くの宇宙生物が、それも人類とコミュニケート可能な生物が登場してくる。残りのページの厚みを見ながら、私が「本当に終わることが出来るんだろうか」と心配になって来た頃、一気に「使い捨て」がはじまる。

 登場したときと同じくらい速やかに駒は捨てられる。そして、テーマがどんどん近くなる。驚くべきことに「2」で使われ尽くされたと思っていた駒も復活する。

 残った駒がどんどん少なくなるに従って、「宇宙のランデヴー」は一気に、まさに一気に最後の、これまで予測もしなかった方向へと転がり出す。しかもその転がり方は、リーではなくクラークの色がくっきりと出た転がり方だ。

 宇宙とは、人類とは、知性体とは、こんなテーマが最後の章で一気に語られる。圧巻である。すばらしいラストスパートだ。

 感想を考える間もなく最終章は非常に安楽な、とても優しい終結を迎える。本当に静かなエンディング。いつまでも心に残るすばらしいエンディングだ。クラーク作品に共通する終わり方という表現で逃げてはいけないんだろうが、クラーク・ファンならきっと解って貰えるような、そんな終わり方だ。

 正直に言って、本当に「4」までの長さが必要だったのかは未だに私も解らない。というより、少し長すぎるという意味で不満。「2」の登場人物は半分でも良かった。「3」も同じ。「4」にいたってはイベントそのものが半分に抑えても良かったと思う。

 でも、最後の圧倒的な大きさ、速さを稼ぐためには、どうしても必要だったのかも知れないなぁ。

 また、私自身は、主人公が母親として妻としてそして主役として振る舞うことへの葛藤を露にするとき(もちろん、それはSFには不似合いであり、その内容はそれをテーマとする作品などと比較するとはるかに三流だろうと思うが)、普通のSFでは感じられない現実感というか共感を感じた。歳取ったのかなぁ、読者である私がね。たとえが悪いけれど、エロ映画でそのストーリーに感心するような変な違和感を感じた訳ね(もちろん、たとえはたとえで事実ではありません)。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: SF
感想投稿日 : 2011年11月29日
読了日 : 1998年8月8日
本棚登録日 : 2011年11月29日

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