猜疑心に満ちた社会を、寛容と包摂の社会へと変えていくためのコミュニティ・デザインを、事例を通して提唱していく。
もはや工業国でも成長社会でも、東アジア唯一の先進国でもなくなったことの「寂しさ」を抱えてしまった日本が、ゆっくりと「後退戦」を「勝たなくても負けない」ためにどうしたらよいのかを考えた著作である。
人口減による地方の衰退に対して、「おもしろい」と思われる地域を作ることを、著者が実際に関わった成功例(少なくとも成功しかけている事例)を通して提唱している。
「わかりあえないこと」を前提として、「対話」の空間としての「広場」をつくること、文化資本の一極集中を回避することへの試みの事例が挙げられている。
例えば、
失業してるのに劇場に来てくれてありがとう」「生活がたいへんなのに映画を観に来てくれてありがとう」「貧困の中でも孤立せず、社会とつながっていてくれてありがとう」と言える社会を作っていくべきなのではないか
という一節のように、猜疑心に満ちた社会を、寛容と包摂に満ちた社会へと変えていくための、文化立国宣言と思われた。
(Kindleで読了)
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- 感想投稿日 : 2021年7月28日
- 読了日 : 2016年7月10日
- 本棚登録日 : 2021年7月28日
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