謎のアジア納豆: そして帰ってきた〈日本納豆〉

著者 :
  • 新潮社 (2016年4月27日発売)
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感想 : 81
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1日最低1パックは納豆を食べることを20年続けている私が本書を手に取ったのは文庫版が発売されてすぐの2020年の夏のことだった。一時は納豆好きが高じて自分の専門外にも関わらず納豆メーカーにESを出す寸前まで行きかけた私だが、本書を読んでみると、なんとまあ自分の納豆に関する知識は浅かったのかと思い知ることになった。筆者は若い頃ミャンマーの山中で納豆に似たものを食べたことを思い出し、記憶を頼りにタイ、ミャンマー、ネパールの山岳地帯で納豆探しを始める(なぜか納豆は山岳地帯でしか食べられていないのだ)。なんとそれらの地域では大豆をその辺の葉っぱに包んで発酵させており、筆者は今までの「納豆菌は藁の中にしかいない」という常識を破壊される。すっかり納豆に取り憑かれた筆者は自作納豆作りを始め、さらには納豆が食される「納豆文化圏」についての独自の理論を構築し始める…。
私が東南アジア諸国の納豆を食べたくても、これらは家庭の味ということもあり、なかなかレストランなどで食べることはできない。ともなれば現地に行くしかないが、前述のように納豆文化圏は山奥に分布しており、現実的ではない。そんななかタイ語やビルマ語が堪能かつ探検家として30年のキャリアを持つ筆者が写真付きで現地の納豆を紹介してくれている本書は、追体験をしているような気分にしてくれる(そして私はそれこそ紀行文の最も良い部分だと思っている)。願わくば現地で彼らの納豆を食べること、それが今の私の人生をかけた目標である。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年6月18日
読了日 : 2023年6月18日
本棚登録日 : 2023年6月18日

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