泣くのは分かってたんです。
でも読むのを止められなかった。
自分もワケあって
5年間一緒に住んでいた黒猫(ヤミクロと言います)と
今離れて暮らしています。
そして5歳で死に別れた親父や
自分を捨てたお袋と最後に行った家族旅行の地が
物語終盤の舞台となる北海道だったことなど、
あまりに自分の状況や生い立ちとシンクロして
どうにも涙が止まらなかった。
5年間一緒に暮らしてきた
サトルとナナという野良猫。
しかしある理由から
サトルはナナを手放さなきゃならなくなり、
引き取り手を探すために
銀色のワゴンに乗り
昔の旧友の元へと旅立つことになります。
ナナは新しい引き取り手と出会う旅の中で
海の碧さや怖さを知り、
富士山に圧倒され、
馬や鹿に驚き、
サトルが見たナナカマドの実の赤や
完璧に弧を描いた二重の虹を
一生覚えておこうと心に誓うのです。
狩りをできない茶トラの子猫に
生きる術を教えるナナのシーン、
ナナと甲斐犬のトラマルの
主人を想うがゆえの
一歩も引けない喧嘩のシーン、
まるで「俺たちに明日はない」の
ボニーとクライドの名場面を思わす
詩情溢れるススキの海の中
ナナとサトルが
お互いの絆を確かめ合うシーン。
物語の中の印象深いシーンの数々は
そのまま自分とヤミクロの思い出と重なり
どうしようもなく
胸を焦がしていく。
最後までサトルの猫で居続けるために
暖かい場所を捨て、
野良になることも辞さない
ナナの誇り高き魂。
犬も猫も動物はみな
見返りを求めたりしない。
ただただ一所懸命に
愛するだけ。
動物に触れて
初めてそれが柔らかいことを知って、
世界は自分が思っている以上に
柔らかくて脆いことを知ったし、
震えてるあったかい小さな体は
日だまりの匂いがして、
愛しいという気持ちを初めて覚えた。
言葉を話すことのできない彼らに
人間が教わることは
たくさんあります。
しかし有川さん
箱型のテレビは猫の乗り心をそそるとか、
猫はいくら飼い主であろうと
己の信ずるところに従うなど
猫のことをホンマよう分かってるなぁ(笑)
ああ〜
無性にヤミクロに
会いたくなりました(>_<)
- 感想投稿日 : 2013年5月28日
- 読了日 : 2013年5月28日
- 本棚登録日 : 2013年5月28日
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