ポール・オースター「ニューヨーク三部作」の第三弾。
美しい妻と傑作小説の原稿を残して失踪した幼なじみ。その彼を「僕」は追い始めるのだが、自分の中で少しずつ何かが壊れていく。でも、追うことは止められない。まるで底なし沼に落ちてしまったかのように。元週刊ファイト編集長の故井上義啓氏が「底がまる見えの底なし沼」という名言を残したが、「僕」の状況を表す表現としてワタシの頭の中にふと浮かんだ。きっと「僕」には「底」が見えたのだろう、とワタシは想像する。
そう、結局、この第三弾も前作同様、読者は想像するしかないのだ。「底」に何があったのかはどこにも出てこない。ただ、「僕」には見えたのだろうとワタシが想像しているだけだ。必ずしも明確ではない物語の終わり方は、下手をすると尻切れトンボで読者にフラストレーションを残すが、オースターの三部作は、読者に想像を残す。傑作だ。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
本・雑誌
- 感想投稿日 : 2018年11月18日
- 読了日 : 2013年10月31日
- 本棚登録日 : 2018年11月18日
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