まったくこの世界は酷いったらねぇ、と言いながら、自分を見つめる誰か――それは自殺未遂をした妹だったりひどい躁鬱病の息子だったり、アフリカで激務を送る女医だったり、あるいはちっぽけな毒蜘蛛だったりするのだが――に気がつくと、おい見ろよ天使が俺に微笑んでるぜ、って言っちゃうそんな感じの短編集である。
刹那的でありながら肯定的で、一瞬一瞬が力強さと無力感の連続のよう。登場人物はボロボロになっている人か、今すでにボロボロで、これからさらにボロボロになる人ばかり。人生はどうしようもなく、しかし世界は美しい。激しくも優しいそれぞれの「生」が、スピーディな舞城訳で語られる。
やはり舞城文体の疾走感が生きている、一人称の短編がよかった。三人称も悪くはないのだろうが、やはり体感速度が違いすぎる……というのが正直な感想。他の人の訳だと、どんな感じなのだろう。舞城訳を読んだあとだと、ちょっと想像できない。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
誰かのためじゃない
- 感想投稿日 : 2015年2月16日
- 読了日 : 2014年12月21日
- 本棚登録日 : 2014年12月21日
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