麒麟の翼 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社 (2014年2月14日発売)
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本棚登録 : 10008
感想 : 485
5

加賀恭一郎シリーズ。
松宮とのバディ感が出ていて、刑事小説としてもおもしろかった。
以前映画版を見たことがあるんだけど、あまり覚えていなくてね。
ガッキーがヒロインだったということと、被害者役が中井貴一さんで、父の思い、愛が・・・というような内容だった記憶だけど、細かいところはほぼ覚えていなくて、犯人も忘れていたくらいだった。

日本橋・麒麟の像の下で刺された状態で倒れていて、その後死亡した青柳。
青柳の財布を持っていた冬樹が、現場近くで車にはねられ、意識不明、その後死亡。
それでも事件の真相を諦めない加賀恭一郎と、松宮。

冬樹の恋人・香織。
青柳の家族、息子の悠人。
青柳の会社で労災隠しがあったことが判明し、被害者と遺族に対する世論も変わってしまう。
多くの人の思いが交錯するが、さすが東野圭吾、さすが加賀恭一郎。最後にはすべてつながった。こういうミステリー大好き。

この本の主題は、「過ちを犯したとしても、きちんと謝罪してやり直すことの大切さ」。
子供の頃、アメリカのワシントンの話(木を折ってしまったことを、素直に認めて謝ったこと)を何度も何度も聞かせられたっけなぁ。子供の時、この話を聞くたびに「そんなことで褒められて立派だと言われるの?当たり前のことなのに」と思っていた。
でも、年をとるにつれ、自分の間違いを認めることはどんどん難しくなっていく。子供の時できていたことが、できなくなる。子供の時より賢くなったはずなのに、知識と経験が悪い方に働き、ごまかし、逃げ切りを期待する気持ちが芽生えることもある。
大人になって改めて、この主題の重大さを痛感した。

加賀が、悠人の顧問に言った言葉。
過ちを犯しても、ごまかせばなんとかなると教えたことの罪深さ。
その結果として、くりかえされた悲劇。
嘘に嘘をかさねてどんどん重い罪をかさねていくって、ミステリーではよくある動機だけど、この本ではその犯人が若者ということもあり、稚拙ゆえの悲しさがあった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 東野圭吾
感想投稿日 : 2022年12月1日
読了日 : 2022年12月1日
本棚登録日 : 2022年11月18日

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