玉瀬家、休業中。

  • 講談社 (2018年8月23日発売)
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感想 : 18
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夫と離婚し、北海道の実家に戻ってきたら澪子。
実家で、母、兄のノーリー、姉の香波と4人で暮らすことになった。

澪子の虚無な日々が、コミカルながら(コミカルだからこそ)切なく感じた。私も歳をとったのだ。若い時なら他人事として読んでいただろうに。妙に迫る現実感。人生折り返し地点あたりで、私のこれまでの人生ってなんだったんだ?と思うのは、つらいよなぁ。

できることも、やりたいことも、なにもない・・・という澪子の現実が、自分のもののように感じた。
私自身は、趣味もあり友達も少しだけどいて仕事もして子どももいるけど、それでも澪子のこの状況にとてつもない共感を覚えた。私自身の根本は虚無感溢れる人なのだと実感。結局、人間が何に共感するかっていうのは、「状況」ではなく「性格や人間性」ってことなのだろう。
ビストロを数日でクビになることも、応募先すべてで落ちて就職が決まらないことも、ささいなことのように感じるものの、こんなことが永遠に続くのかなと思うと絶望するだろう。成功体験のない人は、なんだこんなことー、いくらでも仕事なんてあるーって、なかなか前向きにはなれないものだ。

家族の中で、恥ずかしい存在、ふれてはいけない存在だと思っていたノーリーの前向きさや幼さに救われるのが、良かったよ。
ノーリーは謎だらけで、本人自身もきっとよくわかってないけど、わかんないことに全くこだわってない。こんな人めったにいないけど、もしいたら天然記念物として保護してほしいな。
苦手だった母、わがままで奔放な姉、はずかしいと思っていた兄と過ごしながら、澪子はエネルギーチャージされて、嫌なことや間違っていることに拒否感を示せるまでになった。これってすごい進歩。
家族のもちつもたれつ感、いいよね。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 家族
感想投稿日 : 2024年4月11日
読了日 : 2024年4月11日
本棚登録日 : 2024年3月27日

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