昨日がなければ明日もない

著者 :
  • 文藝春秋 (2018年11月30日発売)
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本棚登録 : 2594
感想 : 359
3

杉村シリーズの中編が3本。
このシリーズ独特の人間の汚い部分や、とんでもない人達がたくさん登場する。

「絶対零度」。
娘が自殺未遂後連絡が取れないという母親からの依頼を受ける杉村。娘はどうしているのか。
イヤミスというか、謎が解けても全然スッキリしないし胸糞悪かったな。
読みながら私が想像してた何倍も嫌な内容だった。宅飲みとは…。

「華燭」。
絶縁状態の親戚の結婚式に参列したいという中学生の付き添いを頼まれた杉村。
絶縁した理由は、その中学生の母の結婚目前に、母の妹が結婚相手とできてしまい妊娠、母は結婚相手と別れ妹がその人と結婚したという過去があるから。
その妹の娘の結婚式に参列しようとするが、披露宴が始まらず、破談だと騒いでる…。
うーむ、謎が解けてもなんでそんなことするのか謎が残る話だった。

「昨日がなければ明日もない」。
間借りしている竹中家の孫娘の同級生とその母から依頼を受ける杉村。
離れて暮らす小学生の息子が交通事故に遭っており、それは息子を殺すための陰謀だという。息子の心配ではなく、言いがかりをつけてお金を引っ張りたいだけの母親。
話の通じない母親の描写は、仕事で相談を受けることが多い私には苦しくなった。
こういう無理難題いう人、私は全く悪くない(というか無関係)なのに私に苛立ち、私に暴言をはき、私は責め立てる人、実際にいるんだもの。
だから、まぁ一番ラストはすっきりしたような。でも、結局はずっと搾取され困らせられていた人が割りを食ってしまう現実が、つらい。
そしてその母に育てられた娘もまた、相当なモンスター。
姉モンスターの次は姪モンスターに搾取され続けるくらいなら、捕まって強制的に離された方が、心は平穏だろう。
昨日がなければ明日もない。当然のことなんだけど、その「昨日」とは、本当にその人自身の昨日なのか、別の誰かの昨日ではないか。
過去を取り上げられた人は、未来をどう描けば良いのか。
家族の病理を見せつけられた思いだった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 宮部みゆき
感想投稿日 : 2024年1月19日
読了日 : 2024年1月19日
本棚登録日 : 2023年12月15日

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