このタイトル(屑の結晶)と、漫画風絵のニヤついたイケメンの表紙。外観だけでは絶対に手に取らない本なんだけど(一見すると極道もの、裏社会ものに見える)、まさきとしかさんの本だから手に取りました。
まさきとしかさんは、それくらい信頼できる作家さんだ。この人の書くものならきっとおもしろい!と思える。
これは…序盤では絶対に真実は分からない。
最初のくすおの人を馬鹿にした態度と「クズ女」と呼ばれるくすおの親衛隊女性達が嫌すぎたのと、主人公の女性弁護士に感情移入しすぎて、依頼者にこれ言われたら私なら夜も眠れないわ…と思うと、あーこれは無理かも、なんて思ったりもしました。
ただ、少しずつ時間の全貌が見えてくるころには、もう読むのを止められなかった!
少年と少女の、幼い頃の約束。本当は果たされてない約束を、果たされたものと信じてしまったら。
そして、やはり絡んできますね、母親が。
まみの母親が病院で泣き崩れたシーンは、妙味があるなぁと感心した。支配する母親にも、我が子への愛情はある…というか、自己愛と子への愛の区別が本当についてない、子を自分と同化してるから、失ったらどうしよう!という母親の悲しみは本心なんだと私は思ったよ。
かといって、本当は親に愛されていたのに!まみは親の愛に気づいてなかったのか!怒、という話では全然なくて、親の愛=支配だから、やはり子どもが苦しむのは当然なのだ。
こういうことが、ぶわーっと押し寄せるあの描写。
大きな事件なのに、動機がささいなことや思い込みだったというのも、親の支配から逃れられず、いつまでも心が大人になれないまみと、社会から隔離されすぎて常識が通用しないくすおらしさというか。
動機の奥にある、親という闇、心を解放できず目先の「怒られないこと」ばかり気にしているアダルトチルドレンの悲壮。
物語の構成も凝ってて、とてもおもしろかった。
- 感想投稿日 : 2024年1月11日
- 読了日 : 2024年1月11日
- 本棚登録日 : 2023年12月23日
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