本当の「頭のよさ」ってなんだろう?: 勉強と人生に役立つ、一生使える ものの考え方

著者 :
  • 誠文堂新光社 (2019年6月5日発売)
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本棚登録 : 1880
感想 : 124
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中高生向きに書かれた本のようだ。
著者は中高生向けの講演活動をすることもあるらしく、語るような口調で分かりやすく書かれている。

頭の良さ=頭がよく働く状態
というのは、確かにそうだと思った。
大人になると、自分の調子が良い時と悪い時がはっきりと分かるようになる。
調子が良い時はよく集中できて、やるべきことも捗り、段取りもうまくいく。たしかに調子の良い時の私は頭がいいかもしれないなぁ。
私は大人だから、この本に書いてあることは大体納得したし、理解できた。
しかし、中高生の時に読んだら半分も理解できなかった、受け入れられなかっただろう。
恥ずかしながら、形だけ理解したふりをする子どもだったなと思う。

齋藤孝先生は、私が卒業した大学の教授であり(学部は違うため授業ではご縁がなかったが)、私が大学に入学した時の入学生向け講演もなさっていた。
その時はスラムダンクの話を混ぜながら話していた。聞く人がどんな人かを想定して、聞き手を飽きさせない話し方を心がけておられたんだろう。
それがもう20年くらい前か。
20年もの間、ベストセラーを多数執筆し、メディアからも引っ張りだこの大人の話なら、中高生も聞く耳持ってくれるのかな。

この本の中で私が胸を打たれたのは、自死することはとてつもない親不孝であるということ。人は与えられた命を生き抜かなければならないということ。
本当にその通りで、これだけ日本語に長けた人でも、このことについては、理屈ではなくストレートな言葉で伝えるしかないんだと思った。
身近な人を自死で亡くした人の悲しみは、図り知れない。
この言葉が、この本を読んだ人、齋藤先生の講演を聞いた人の心に残り、一人でも多くの人が自分の命を生き抜くことを選んでほしいと思った。

他方で、それは違うよね?と思ったことは、中高生に対して「敵、味方」どちらでもない「保留」の人間関係を多く作って、天気の話とか相手の好きなものの話とか(つまり、こちらの本心を見せずに当たり障りない話だけ)してなってところ。
友達は少しいれば充分、そんなに多くの人に心を見せなくて良い、という考えが前提としてある。
この話、大人にとってはまさにそうだ。でも、中高生にそれは無理だ。
うちの親も、私が中学生の時、親が付き合ってほしくないと思う子達と私が友達関係になったら「友達なんて一人いれば充分!あんなの友達じゃない!」と全否定してきたものだった。
それと同じくらい、中高生にとっては聞く耳持てない話だと思う(たしかに、人を安易に信用して犯罪に巻き込まれてしまいそうな中高生にはこの教えは当てはまるけど、この本の読者はそれとは違うのではないかと思う)。
私が中高生の時、放課後いつまでも、何時間でも同級生と話していられた。話が尽きなかった楽しい思い出は、その後その子達と疎遠になってしまっても忘れない。もしあの時に戻れても、私は当たり障りない話なんてしない。自分の本心を隠して、保留のままでは、あの経験は絶対に得られなかった。
人を信じて心の内を話すことで、傷付いたこともある。でも、傷つくことで、人の痛みがわかったり、その後の人間関係を考えるキッカケにもなった。決してマイナスなだけではなかった。中高生の時にそうやって人と接していた私も、現在は大人として節度を保って保留の人間関係を多く構築しているよ。中高生の時にそんな大人みたいなことしなくても、できるようになるもんだ。
失敗から学ぶのではなく、最初から失敗しないようにしよう、という齋藤先生の教えは、「失敗したくない、世の中イージーに渡っていきたい」と思う冷めた若者には響くのだろうか…。
人間関係については、理論、理屈だけで学べることではなくて、実際に経験してみないと上達しないのではないかと、私は思いました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 教育
感想投稿日 : 2021年12月5日
読了日 : 2021年12月5日
本棚登録日 : 2021年11月20日

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