キネマトグラフィカ

著者 :
  • 東京創元社 (2018年4月28日発売)
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感想 : 90
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流浪の月の巻末にこの本の広告が出ていて、気になって読んでみた。

平成元年に映画会社に入社した同期たちの話。
アラフィフとなった彼らが再会し、若い時をロードムービー的に思い出す構成になっている。
中年期の男女が若い頃を思い出すとき、男性は過去を美化し、女性は過去をなかなか美化できないものだなと思った。
実際、このころ女性が働くのは、今よりもっと大変な時代だったんだろう。

初の女性セールス、ママさんプロデューサー、物珍しさから付けられる肩書き。
そして、結局のところ「女の敵は女」なのだというエピソード。
読んでて、動悸がするほど苦しかった。
女性が仕事をガムシャラに頑張って苦しむ姿は私は心底苦手だ。読んでると自己投影しすぎてしまい、苦しくなる。
前記の広告では、働く全ての人へ!というアオリが書いてあったと記憶しているけど、実際に働いて現在進行形で苦しんでいる人には、こういう話はなかなかキツいのではないかと思う。
第一線を退き「昔は良かったよなぁ」なんて言える年配者向けの本なのかな。

ダブルブッキングの果てにフィルムを抱えて全国リレーとか、非合理的すぎて美談には感じられなかった。
アラフィフの現在も、頑張ってきた人が報われたかと言えば微妙であり、もの悲しい読後感だった。
悲しいけど、現実はこんなものなのかもね。
映画業界の現実を考えれば、ハッピーな現在!になるはずもないが…
だからこそ希望が持てる話を読みたかった。

頑張れば頑張るほど、報われるより苦しむ、それが仕事、なのだろうか…

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: お仕事小説
感想投稿日 : 2020年8月30日
読了日 : 2020年8月30日
本棚登録日 : 2020年8月23日

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