おふくろの夜回り (文春文庫 み 5-9)

著者 :
  • 文藝春秋 (2013年2月8日発売)
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本棚登録 : 46
感想 : 9

著者三浦哲郎さんが雑誌『オール讀物』の巻末ページで連載していたエッセイの中から特に優れたものを集めた本です。
帯のところに『ここに確かで美しい日本語がある』と書かれていて、まさしく美しい日本語の文章を読むことができました。
そのページに割り振られているのが千文字だったということもあるでしょうが、装飾もなくシンプルに綴られていきます。
けれど、その行間に描かれている景色の色彩を感じることができました。

エッセイの内容は、東北に住む母の思い出話や自身の日常についてのことで、読んでいると少し前の平和で温かい人間同士のつながりがある生活を感じることができます。
今はなくなりかけているものだなぁと思うと、じんわりとしみてくるような心地よさがしました。
私はここに書かれているような生活を知らないし、田舎というものを知らない東京育ちなので、年齢が高めの人や田舎から上京してきた方々はもっと身近に懐かしく読むことができるのではないかと思います。

巻末にある文芸評論家の秋山駿さんの解説も興味深かったです。
秋山さんは著者である三浦さんと親交があった方で作家の人柄についてそこに書いています。
作家とはなんなのか?
どういう姿勢で作品に向き合えばいいのか?
それを読んでから読み返すとさらに色彩は広がって奥深く感じられました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 趣味の本。
感想投稿日 : 2013年5月4日
読了日 : 2013年4月29日
本棚登録日 : 2013年4月14日

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