顔 FACE (徳間文庫)

著者 :
  • 徳間書店 (2005年4月15日発売)
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本棚登録 : 2933
感想 : 265
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私が読む横山秀夫氏作品の12冊目だが、最近、氏の作品を遡って、読んでいなかった初期の頃の作品を読んでいる。

本書は婦警の平野瑞穂が主人公である。
彼女は『陰の季節』に出てきていたらしいし、その時の事件も本書の中で触れられているので、なんとなくは思い出せたが、どちらかといえば彼女の上司の「七尾」という苗字に既視感があったくらいだ。

なにしろ『陰の季節』を読んだのは半年前で、この半年間に横山秀夫氏作品2冊も含め、大量に挟んでしまっているので覚えていない。

本書は20年強前に書かれたものなので、「婦警」という言葉で語られているし、この20年間でどれだけ警察の色々なことが変化しているのか、はたまた変化していないのかは私にはわからない。
とりあえず、20年前に書かれた本書では、平野瑞穂は、朝一に県下各署に夜間の事件や事故について電話で聞き取りを行い、手書きでメモっている。
こんな非効率なことが現在も本物の警察で行われていないことを願う。
(県警に詰めているマスコミも似たようなことをしている)

著者が2ヶ所で書いて伝えたかったこと。
「(犯罪とは)直接の被害者だけでなく、思いも寄らないところにまで不幸の波紋を広げ、多くの大切なものを踏みにじる。人を泣かせ、人を傷つけ、人の一生を狂わせる。犯人は知らない。おのれが撒き散らした毒も棘も生涯知ることなく、のうのうと日々過ごすのだ。」(212ページ)
「犯罪は思わぬところまで波紋を広げて人を傷つける。だが、(ネタバレになるので省略)」(239ページ)
私は幸い全くこのような被害に遭っていないが、日々の事件や事故のニュースを見るに、直接的被害者だけでなく間接的にでも何かしら影響や被害を受けてしまっている人がいるのだろうと、考えることがよくある。

239ページの案件、これは間違いなくPTSD案件だ。(本書にはPTSDという単語は出てこないが)
実社会で、児童への予告無しの不審者訓練とかもやめてほしいと常々思っている。
本書から20年も経っているのだから、現在の実社会は少しはまともになっているかと思い調べてみたら、「2019年時点でもある小学校で1年生にだけ事前に知らせ、それ以外の学年には知らせずに訓練をやっているという記事」がみつかった。
事前に知らされていても小1には恐怖だろうし、小2以上だってPTSD案件だと思う。
大人だって怖いよ。

本書の事件は小学校ではないのだが、横山秀夫氏がこういうところに着目して問題提起をされている点が流石だし、鋭いと思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説・物語 (時代小説はこちら)
感想投稿日 : 2022年8月8日
読了日 : 2022年8月8日
本棚登録日 : 2022年8月8日

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