実は満を持して『クライマーズ・ハイ』を読み始めたというのに、そちらは全然読み進められず放置中。
片や後から読み始めた本書は一気に引き込まれて先に読み切ってしまった。
現在の自分が読むから、「ディスコ」!のシーンで、もう舞子がどういう人だかわかったのだが、この話が最初に書かれた頃に読んでいたら私もたぶん気づかなかったと思う。
それぐらい1990年と現在では社会は変化してきた。
そういう意味では、あの頃にはまだ「セクハラ」という(行為はあったが)言葉も概念も無かったはずなので、本書に出てくる「セクハラ署長」という単語は2005年か2008年に加筆されたものだろう。
時効がかかった最後の1日だけの勝負。
しかも取り調べの供述だけから刑事達の戦いが進んでいく様子が書かれているのが見事。
まあ、いくら自分史上の大事件だと言っても、喜多も竜見も15年前の細かいことまで覚えているという設定には無理があるけれども。
(この「竜見」という文字、縦書きだと私は何度も「意見」と読み間違えしてしまい、難儀した。)
しかし、だいたいこういう状況だと、取り調べに呼ばれた喜多が、冤罪でっち上げられそうなものだが、そうならなくて良かった。
取り調べ担当刑事の寺尾は、活躍するかと思いきや、別室で取り調べ中の所轄のトクさんにライバル心むき出しで、どうしちゃったの?って感じだが、『64』の蔵前のような、私の好きなタイプの刑事達が他にいた。
鑑識の簗瀬、橘を取り調べた曲輪、そして橘のことも鮎美のことも見つけ出してきて鮎美の取り調べも初めて任せてもらえた谷川。
元刑事だというホームレスと接した時の谷川の描写や、谷川とペアを組んだ所轄の新米刑事の新田の成長ぶり、こういうところ、本当に好き。
私は叙述ミステリーも、そうでないタイプもどちらも好きなのだが、横山氏の小説は、叙述ミステリーではない方の面白さ。
一点、おかしな点と、他にも書き留めておきたいこの小説の肝の部分については、ネタバレになってはいけないので、メモの方に残しておこう。
- 感想投稿日 : 2021年11月23日
- 読了日 : 2021年11月23日
- 本棚登録日 : 2021年11月23日
みんなの感想をみる