限界費用ゼロ社会 <モノのインターネット>と共有型経済の台頭

  • NHK出版 (2015年10月29日発売)
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いま、私たちは一大パラダイムシフトに立ち会っているらしい。なぜそんな変化が起こっているのか?パラダイムシフト後の社会はどうなるのか?が知りたくて本書を手に取った。

著者はジェレミー・リフキン。欧州委員会やメルケル独大統領のアドバイザーも務める大物。限界費用ゼロ社会という切り口で、豊富な実例を根拠に、ポスト資本主義のビジョンを示す本。

■要約

1 「資本主義から協働型コモンズへ」

資本主義では生産性が極限まであがる。生産性が極限まであがると、利益が出せなくなる。資本主義は失敗によってではなく大成功によって終りを迎える。エントロピーの増大による気候変動などのつけも、それを後押しする。次に来るのは協働型コモンズによる共有型経済。移行はすでに始まっており、21世紀の半ばまでにはほぼ移行するのではないか。資本主義は残るだろうが、経済の端っこに追いやられる。

2 「限界費用がほとんどゼロになる社会」

財を一つ増産したり、サービスを一回増やしたりするのにかかるコスト(限界費用)がほぼゼロならば、それが生産性の最高水準ということになる。IOTが限界費用ゼロ社会を支える。IOTは3つのインフラ(コミュニケーションの手段、エネルギー源、移動手段)をより効率的する。

3 「移行後の社会の価値感」

無一文から大金持ちになりたい→持続可能な生活の質を求める
所有→アクセス
市場における交換型経済→共有型経済
生産物の量で測るGDP→生活の質を重視する指標
従来の通貨(見知らぬもの同士の集団的信頼に裏打ち)→地域通貨、時間通貨(社会関係資本に裏打ち)
希少な「もの」を求める気持ち→実は潤沢に存在しているお互いの受容や信頼、仲間を求める気持ち
などなど。

■まとめ
気候変動をとめつつ、健全な社会を実現させるとてもよい移行という風に見えた。が、完全なシステムというのは存在しないと思うので、欠陥もあるのだろうか。すでにある格差はどうなるのか?人類には競争の本能があるからこんなユートピア無理では?それでも残るインフラの維持に従事する人は?などの疑問にも著者なりの回答をしていたように思うが、文章ぎっしりで、何回も寝落ちしながら読んだので、見落としていることが多そう。網羅的で読み応えのある本だったので、単元ごとに精読する形で再読していけたらいいなと思った。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年8月28日
読了日 : 2021年8月29日
本棚登録日 : 2021年8月28日

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