題材に興味があったのと、ジョーカー・ゲームがおもしろかったので、こちらも読んでみました。
最初のうちは、『探偵&助手を配置した本格推理もの』って感じだったんですが、推理要素はメインって感じじゃなかったです。
事件や推理の要素もしっかり組んでありましたけど、この本の主眼はそこではないなぁと。トリックについては、面白い部分もあったけど、大枠は――特に終盤の展開は、解決すべく解決したって感じで。
巣鴨プリズンの雰囲気とか、東京裁判の雰囲気とか、終戦直後の雰囲気とか……とにかく「当時の雰囲気」をこれでもかと、浴びるように堪能することができる本。そんな感じでした。ここまで要素を盛り込むかっていうくらい、当時のネタがぶっこまれていまして。捕虜にゴボウを食べさせたら、木の根を食べさせられた、虐待だ、って言われたってエピソードとか、そういうやつ。サービス精神旺盛な著者さんなのか、よくまぁここまで、当時のエピソードをてんこに入れることができるなぁと関心したり。
登場人物の行動動機や、事件の根底に流れているものも、「当時の雰囲気」にどっぷりひたれるものでした。
ただ、「当時の雰囲気」を描写することが先行していて、お話がちょっと散漫になっている気も。そんな中でもキャラが立っているのはさすがなのですが、もっとこー、時代の流れや雰囲気に合わせるばっかりではなく、読み手を著者さんの好きなように引っぱり回してくれるようなストーリーテリングでもよかったのよ、なんて思います。ともあれ、楽しかったです。
- 感想投稿日 : 2017年4月10日
- 読了日 : 2017年4月10日
- 本棚登録日 : 2016年9月29日
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